テーブルに広げれば、いつの間にか手が動いて組み始めてしまう・・・とにかく感覚的に楽しめるジグソーパズルも、ちょっと観察してみると、製品によっていろいろな違いがあることがわかります。より深い知識とパズルにまつわる雑学をご紹介します。

インターロックとは

ジグソーパズルは、1760年代に子供用の教材としてイギリスで生まれました。それは、地図の絵柄を国境の線にそって切り離して作ったものでした。ですからカットラインは、ランダムなカーブで、ピースとピースを合わせてもすぐにずれてしまうものでした。

その後、パズルが大人にも楽しまれるようになって、いちどつないだピースどうしは、はずれないという工夫がなされました。それがインターロックという、いまやおなじみのカットパターンです。これによってジグソーパズルは、ピース数の多いものでも、途中でくずれてしまうことをあまり心配しないで組み続けられるようになったのです。

これらのパターンはすべて木の板を糸ノコで切ることによって作られたわけですが、プレスの機械で打ち抜きぬく紙製のパズルに移ってからも、インターロックのパターンは受け継がれました。

  • 古いカットラインのピース
  • インターロックのピース

カットパターンの種類

紙製のパズルは、一般的には図のように2回にわけて抜きます。

このようにしてカットされたパズルは、各ピースの形は似ていますが、微妙な違いをみつけ出す楽しみがあります。推理の要素が多く、くり返し遊んでもピースの形で場所がわかることが少ないので、ほとんどのジグソーパズルは、このスタイルで作られています。

その場合、テンヨーでは、たとえ1000ピースでも同じ形のピースがひとつもないよう、ピースデザイナーが工夫をこらしてピースのラインを作っています。

実際のところ、絵柄を別とすれば、そのパズルが組んで楽しいかどうかは、ピースデザイナーの腕にかかっています。パズルをよく理解していない人が適当に描いたラインで作られたパズルは、間違ったピースでもはまったり、単調すぎることが多いのです。

紙製のパズルのもうひとつのカットの方法は、まったくランダムなパターンで1回で抜く方法です。ピースの形がさまざまで、となりにくるピースの形が予測できないという難しさと、意外性があります。

テンヨーでは、この自由な形が作れるという特徴を生かして、ひとつひとつのピースを犬や猫など、特殊な形にすることにより、組むときの楽しさを倍増させたシルエットピース・ジグソーパズルも作っていました。

  • 2回抜きのパターン
    1回目に横方向に抜き、2回目に縦方向に抜く
  • シルエットピースの形

ピースの形あれこれ

2回抜きのカットをしたパズルの場合、ピースの形は、カタカナの“キ”の字のような形が基本となります。そして、その凹凸の数を変えることにより、図のようなバリエーションが作れます。

この変形ピースをどのくらいの率で混ぜるかも、パズルを組んでいくときの楽しさに大きな影響があります。“キ”の字ピースが続いて、単調になりすぎるところに、この変形ピースを適度に混ぜ合わせていくのです。

“キ”の字の形だけにカットされたパズルもありますが、いちど組んでみれば、楽しさの違いは歴然です。

さてもうひとつのピースの形の大きな違いは、ピースの基本型が正方形か、長方形かということです。

図のように一方向に長いピースは、その形から、タテヨコどちらの向きに置くピースであるということが、すぐわかってしまいます。全部のピースがそのような形になるため、実際にはこのパズルは、かりに1000ピースといっても 500ピースが2つ混ざったものといってよいでしょう。

図はテンヨーのピースですが、正方形が基本となっていることがわかります。したがって、このピースはは4方向に回転させて使えるため、推理の要素が多くなり、心地よい難しさをもたらします。

フィット感について

パズルの楽しさに必要なことは、まず気に入った絵柄、そして印刷の色やカットラインのデザインが良いことなどですが、もうひとつ重要なのがフィット感ということです。

フィット感とは、ピースをはめたときにピタリとはまる感触のことですが、これがないパズルは遊んでいて、楽しくありません。フィット感のないパズルは、間違った場所でも入ってしまうため、似た色の部分など、“はたしてこれであっているのか”と、不安な気持ちのまま進めることになります。フィット感のあるパズルであれば、1ピースごとに楽しむことができます。

テンヨーでは、ジグソーパズル専用に開発した厚くて弾力性のあるボール紙を使い、すきまがほとんど出ない精密なカットをしています。

ミッシングピースとは

パズルを完成したときに足りないピースのことです。

ジグソー誕生以来、多くのパズラーが足りない最後の1ピースをさがして、テーブルの下にもぐりこみ、ごみ箱をひっくり返してきました。もちろんメーカーの方も、ピース不足を発生させないためのあらゆる工夫をしてきました。最後の1ピースを入れるときが最大の快感であるジグソーパズルにとって、これは深刻な問題でした。そして、例え製造時点で完璧になっても、長い時間をかけて楽しむジグソーパズルには遊んでいる間にピースを紛失することも多くあります。

そこでテンヨーが生み出した解決法が、どんな場合でも、必要なピースだけをすぐにお送りするシステムで、いまや日本のメーカーのほとんどがこのシステムを採用しています(海外にはありません)。

商品の中に入っているサービスカードに必要事項を記入して、郵送していただけば、お手元に必要なピースをお届けします。

映画やドラマの中のジグソーパズル

パズルを組むこと自体がひとつのドラマですが、その広い人気と、ビジュアルにイメージを伝えられる点から、ジグソーパズルは、いろいろな映画やドラマ、あるいはコミックでもとりあげられてきました。

ジグソーパズル探訪の最後は、古今東西のそんな例をご紹介しましょう。

  • オーソン・ウェルズの「市民ケーン」では、ケーンの妻スーザンが豪邸の中でかなり大きな木製ジグソーパズルを組み続け、あまり夢中なのでケーンにたしなめられるというシーンがあります。木製ジグソーパズルは、当時、大変高価で、上流階級の遊びでした。

  • 織田裕二さんと鈴木保奈美さんが共演した「東京ラブストーリー」は、いっしょに組んだパズルの最後のピースを完治がポケットに入れて持ち帰ってしまい、あとでそれを届けるというストーリーでした。

  • わたせせいぞうさんの「ハートカクテルVol.50」では、ミッシングピースをテーマにカップルの仲直りを描いています。

  • エド・マクベインの87分署シリーズには「ジグソー」という作品があり、何人かがバラバラに持っているピースをめぐって、犯罪が展開していきます。

  • ユーミンの「満月のフォーチュン」という曲には「ジグソーのかけらの最後をきみにあげる」というフレーズがありますね。